[ 膀胱がんについて ]
膀胱がんとは:腎臓が作った尿を体外へ排出する経路を「尿路」と言い、上から順に腎盂(じんう)→尿管→膀胱→尿道とつながっています。これらの尿路の表面から発生するがんを「尿路上皮がん」と呼びます。膀胱がんは尿路上皮がんがたまたま膀胱にできたものということになりますが、尿路上皮がんの部位としては膀胱が最も高頻度です。性別による頻度の差がはっきりしていて、男性は女性に比べて3〜4倍多いといわれています。この違いは主に喫煙によると考えられていて、あまり知られていませんが喫煙は膀胱がん発生の最大の要因(原因)です。比較的ご高齢の方に多く、一番多い年齢は70歳台です。
膀胱がんの症状:最初の症状は目で見てわかるような血尿(肉眼的血尿)のことが多く、患者さんご自身によりワイン・コーヒー・コーラのような色と表現されることもあります。他に症状を伴わないことが多く、ある日突然真っ赤な尿が出て、収まったかと思うとまた出るということを繰り返すのが典型的です。放置すると血尿が止まりにくくなり、中でも血のかたまりが膀胱の出口につまって膀胱がパンパンになる状態(膀胱タンポナーデ)は非常に苦しいものです。さらに進行すると全身に広がってさまざまな症状の原因となり、命取りになることがあるのは他のがんと同様です。
膀胱がんの診断に必要な検査:がん以外の病気で血尿が出ることはたくさんありますが、ある程度以上の年齢(40歳くらい以上)の方が肉眼的血尿で受診された場合、膀胱癌の可能性を考えて検査をします。そこでまず必要なのが膀胱鏡です。これは尿道からカメラを入れて膀胱の中を直接観察するので少し気持ちのよくない検査ですが、やわらかいカメラ(軟性鏡)で行いますし、普通は2〜3分で済みます。そして膀胱鏡で膀胱がんと診断されたら、組織検査(生検)・CT・MRIなどでがんの性質(悪性度)や根の深さ、広がりを調べて最適の治療を考えます。
膀胱がんの治療:がんが初期またはおとなしいものであればカメラで削り取る手術(経尿道的腫瘍切除術)で済みますが、再発しやすいと判定されれば薬剤を膀胱へ注入する治療を行うことがあります。さらに、進行したものや悪性度の強いものであれば抗がん剤や放射線による治療、開腹による手術が必要になることもあります。膀胱を残して治療することが難しいと判断されれば膀胱を全部取る手術(膀胱全摘術)が必要になります。この場合、尿の通り道を作り直す処置(尿路変更術)を同時に行います。当院では、膀胱がん自体の病状だけでなく、患者さんの年齢・他の病気の有無(基礎疾患)・ご本人やご家族のご希望などを考慮して、最もふさわしい治療を受けていただけるように努めています。