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[ 脳神経外科 ]

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病気のはなし

尾道市立市民病院における、脳神経外科の病気のはなしをご紹介いたします。
(2018年4月現在)
1.脳卒中診療

脳卒中(のうそっちゅう)とは、脳の血管が詰まったり破れたりする病気で、多くの場合は急に起こります。血管が詰まるタイプのものとして脳梗塞(のうこうそく)一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)があり、血管が破れて出血するタイプのものとして脳出血くも膜下出血があります。いずれのタイプも早期の治療が必要です。
代表的な症状としては「急に片方の、手足や顔が動かなくなる」「急に片方の目が見えにくくなる」「急にしゃべりにくくなる、言葉が出なくなる」などがあり、「急に」および「片方の」というのがキーワードになります。また、「突然の激しい頭痛」というのはくも膜下出血のサインかもしれません。すぐにおさまっても安心できません。これらに当てはまる場合は、直ちに救急車で病院を受診してください。
当院では、従来の急性期の内科的・外科的専門治療はもちろん、脳梗塞超急性期に対するアルテプラーゼ静注療法もおこなっております。これは、アルテプラーゼという薬を静脈注射して、脳の血管に詰まった血栓を溶かす方法です。発症4.5時間以内(発見からではありません)で一定の条件を満たしている場合に実施可能です。
また、再発予防のための対策も重要で、従来の血圧管理や抗血小板薬の投与だけでなく、血管診療センターでの検査・指導や、非弁膜症性心房細動に対する経口抗凝固薬の投与や、頚動脈狭窄症に対する手術(頚動脈内膜剥離術)などもおこなっております。

2.認知症への対応

近年は高齢化の影響で認知症の患者様が増加しております。多くは次第に進行して治りませんが、一部に脳神経外科で解決可能な認知症があります。慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症(主に特発性正常圧水頭症)です。まさに「手術で治る認知症」といえます。当科ではこれらの精査も積極的におこない、手術も数多く実施しております。
・慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ):頭部打撲後(軽い打撲も含まれます)、2〜4か月で認知症のような症状が出現し、進行します。歩きにくくなったり、トイレが間に合わなくなったり、片方の手足が動きにくくなったりする方もいらっしゃいます。局所麻酔の手術で、2泊3日程度の入院になります。
・特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう):脳の中を巡っている脳脊髄液(のうせきずいえき)の循環が悪くなることにより起こります。主な症状は、歩行障害、失禁(大小便を漏らす)、認知症で、上記の慢性硬膜下血腫と似ています。こちらは全身麻酔の手術で、1週間程度の入院が必要です。

3.頭部打撲の注意事項

頭部を打撲したあとで、時に不安になることがあります。頭部打撲後24時間は以下の点に注意してください。

・周囲の呼びかけに無関心になる。呼びかけてもはっきりした返事が返ってこない。つじつまの合わないことをいう。(意識が低下)
・頭痛がだんだんひどくなる。
・何度も嘔吐する。
・けいれん(ひきつけ)を起こす。
・舌がもつれてきたり、手足が動かしにくくなったりする(力が入らない)。
・言葉が出ない、言葉が理解できない。
・その他、いつもと違うことがみられる。(たとえば、大小便をもらすなど)

頭の中で出血してそれが増加すると、上記症状が複数出現します。多くは打撲後数時間以内に症状が進行します。
実際に上記の症状が出現した場合、必ずしも自力では対処できません。ご家族など、まわりの皆様の協力が大切です。直ちに病院を受診してください。

お子さんの場合は、

・ふだん喜ぶものや興味を示すもの(テレビアニメや漫画など)に関心がなく、どこかぼんやりとしている。視線が合わないなど。
・けいれん(ひきつけ)を起こす。
・何度も嘔吐する。頭痛を訴える。
・その他、いつもと様子が違う(たとえば乳児がミルクを飲まなくなる、など)。

お子さんは大人と比較して、頭デッカチの体型であるために、重心が高くなり、転倒して頭部を打撲しやすい傾向にあります。特に乳児は自分で症状を訴えられないことが多く、症状がわかりにくいこともあります。また、大人が受傷現場を確認できないことも多いです。

4.脊髄脊椎疾患

脊椎(せきつい)とは、いわゆる「背骨」のことで、この中を脊髄(せきずい)という神経の束が通り、全身に神経の枝を出しています。この脊髄が何らかの原因により障害されて、しびれや麻痺、痛みなどを生じる疾患を脊髄脊椎疾患といいます。年齢とともに生じる骨・椎間板・靱帯の変形が原因の場合を脊椎変性疾患、骨折などで脊椎が変形したり神経が損傷されたりするものを外傷性疾患といいます。他にも血管の異常や出血、腫瘍、奇形などによるものもあります。
整形外科と一部重複する領域ではありますが、当科でも脊髄脊椎疾患に幅広く対応しております。

5.脳腫瘍

脳腫瘍とは頭蓋骨の内側にできる腫瘍(できもの)のことです。子供からお年寄りまでさまざまな年代に生じます。最初からその場所に生じた原発性脳腫瘍と、体の他の部位のがんが転移してできた転移性脳腫瘍に分けられます。さらに、原発性脳腫瘍は、脳そのものから発生する脳実質内腫瘍と、脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生し脳を圧迫するように発育する脳実質外腫瘍に分けられます。原発性脳腫瘍の発生は人口10万人当たり年間10人程度の頻度といわれています。原発性脳腫瘍も体のほかの部分の腫瘍と同じように、良性、悪性腫瘍に分けられます。
これら脳腫瘍に対しましては、個々の症例に応じて、綿密な治療計画に基づき、手術・放射線療法・化学療法・分子標的療法などの集学的治療をおこなっております。また、外来通院中の在宅療養に必要な支援も受けられるよう支援いたします。

6.機能性疾患

一見脳には粗大な異常がないにもかかわらず、機能異常をきたす病気で、外科的な治療手段のありうるものを、機能性脳疾患といいます。代表的なものとして、片側顔面痙攣や特発性三叉神経痛などがあります。
・片側顔面けいれん:顔の半分が自分の意思とは関係なく痙攣するもので、ふつう目の周囲から始まりだんだん口元へと広がります。通常は片側のみで、両側に出現することは非常にまれで0.5%以下です。脳の深部で、顔を動かす神経(顔面神経)に血管が接触して圧迫することが原因で起こります。手術(微小血管減圧術)でこの圧迫を解除できれば、多くの方の症状が改善します。
・三叉神経痛(さんさしんけいつう):三叉神経は顔の感覚をつかさどる神経です。三叉神経痛は顔に痛みの出る病気で、様々な原因で起こります。副鼻腔炎や帯状疱疹や脳腫瘍などの他の病気が原因になっていないものを特発性三叉神経痛といいますが、一般的にはこれを「三叉神経痛」といいます。内服薬がよく効きますが、効果が不十分な場合や、副作用で内服継続が困難な場合に手術を検討します。手術は脳の深部で、三叉神経を圧迫している血管を見つけて、圧迫を解除します(微小血管減圧術)。他の治療法として、定位放射線療法や神経ブロックなどがあります。

 

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