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このトピックスは 『肝がんの治療について』 です。

尾道市立市民病院では、尾道市民の皆様の健康増進を願い、定期的に“健康”に関するトピックスをWEBで公開しています。  →が記されている医師は異動により、現在は当院に在籍しておりません。

 

肝がんの治療について

2005年7月号掲載 外科 中井 肇医師|2008-12-08

 厚生労働省の発表した2002年の人口動態統計年計概数によると、肝がんによる死亡者は3万4,615人(男2万3,798人、女1万817人)であり、これは全体では肺がん、胃がん、大腸がんにつぎ第4位、男性では肺がん、胃がんにつぎ第3位、女性では胃がん、大腸がん、肺がんにつぎ第4位でした。死亡率の年次推移を見ても、近年の治療法の進歩にもかかわらず、肝がんの死亡率はなお増加を続けています。
 わが国の原発性肝がんの95%は肝細胞がんであり、ほかに肝内胆管がん等がありますが稀で、ここでお話をさせていただくのは肝細胞がんについてであります。この肝細胞がんの80%はC型肝炎起因の肝細胞がんであり、15%はB型肝炎起因の肝細胞がんです。C型肝炎が肝細胞がんのほとんどを占めているのはわが国の特徴で、肝細胞がんが発生するハイリスク・グループが判明していますので、この方々に対して繰り返し経時的に検診を行うことにより、肝細胞がんを早期に発見することが可能となります。
 肝細胞がんに対する治療についてですが、検診の普及、超音波,CT,MRI等画像診断の進歩により、比較的早期に肝細胞がんが発見されるようになり、従来の肝切除が主体の治療から近年、内科的治療を含めた種々のオプションを有する個別化治療へと大きく変貌を遂げています。肝細胞がんに対する治療法には、大きく分けて?肝切除術、?穿刺局所治療、?経動脈的治療、の三とおりの方法があります。最近ではこれに肝移植が加わってきましたが、まだ一般的ではありません。穿刺局所治療とは、「経皮的腫瘍内エタノール注入療法」、「マイクロ波熱凝固療法」、さらに最近になって導入された「ラジオ波熱焼灼療法(RFA)」を指します。現在、一回当たりの獲得しうる壊死範囲が広いことから、RFAが穿刺局所治療の主流となっています。経動脈的治療とは、主に「肝動脈塞栓術(TAE)」を指します。TAEは肝動脈血流の豊富な肝細胞がんに対して、その栄養血管を塞栓し、腫瘍を阻血に陥らせることにより抗腫瘍効果を得る治療法で、肝切除や穿刺局所治療の適応とならない進行肝がん例や肝機能不良例に実施されることが多いようです。
肝切除は肝細胞がんに対する最も根治性があると考えられる治療法で、最近では肝切除の適応の厳格化、安定した標準手術手技の開発、術後管理の向上により、術後合併症は激減し、より安全に手術が受けられるようになりました。またその治療成績も著明に向上しています。
以上のような種々の治療法を駆使して肝がんを治癒に導くわけですが、その方に合ったオーダーメイドの治療を行う事が重要と考えられます。
最後に、肝がんについてもやはり早期発見が重要なことは、他臓器癌と同様で、肝機能障害のある方は検診を受けることをお勧めいたします。

文責:尾道市立市民病院 2005年7月号掲載 外科 中井 肇医師|2008-12-08
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