[ 健康トピックス ]
尾道市立市民病院では、尾道市民の皆様の健康増進を願い、定期的に“健康”に関するトピックスをWEBで公開しています。 →※が記されている医師は異動により、現在は当院に在籍しておりません。
女性の性器脱(骨盤内臓器脱)について
1)性器脱とは:
性器脱は骨盤内臓器脱とも呼ばれ、女性の膀胱や子宮が膣内を下降して膣の外に出て来る状態の総称ですが、膣に隣接した様々な臓器が膣壁をかぶって突出して来ます。脱出して来る臓器に応じて子宮脱、膀胱脱、直腸脱などがあります。原因は骨盤の底を支える組織(筋膜、筋肉、結合組織など)が弱くなって弛緩することにより起こります。
2)性器脱の症状:
外陰部に何かがある感じ(違和感や下垂感)を始め、子宮を支える組織が牽引されることによる下腹部痛や腰痛、脱出した組織が炎症を起こすことによる出血などが主なものです。また膀胱の動きが制限されることにより、尿が出にくい、尿の回数が多い、尿が漏れるなどの排尿に関連する症状も伴うことがあります。従って、婦人科だけでなく泌尿器科でも取り扱われることの多い疾患です。
3)性器脱の治療:
根本的治療は手術による修復です。エストロゲン(女性ホルモン)補充やペッサリーの挿入などの手術以外の方法もありますが、効果は低いといわれています。手術の方法には種々のものがありますが、従来の方法は術式が煩雑なことに加えて再発率の高いことが大きな問題でした。最近では人工的なメッシュを埋め込むことにより支えとする方法が主流となりつつあり、中でもTVM(Tensio-free Vaginal Mesh)という方法は簡便かつ効果が高い方法として広く行われつつあります。当院泌尿器科でも女性性器脱の治療法としてこのTVM手術を、婦人科と協力して2007年から行っています。上記のような症状でお悩みの方は担当の医師に一度ご相談ください。
TVM手術について
Tension-free Vaginal Meshとは、直訳すれば膣からの操作によりメッシュに緊張をかけない状態でメッシュを埋め込む手術、という意味です。緊張をかけないということは、メッシュを例えば骨などにがっちり固定しないでゆったりと張ることにより自然な張力を得るということです。
ポリプロピレンという材質の糸で編んだ特殊なメッシュの布を、膀胱と膣の間(前壁形成といいます)または直腸と膣の間(後壁形成といいます)、あるいはその両方に埋め込み、人工的に癒着を起こさせます。お腹は切らずに膣と臀部からの操作のみで行い、原則として子宮を摘除することはありません。この方法だけで全ての種類の性器脱の治療が可能であり、また以前に別の方法で性器脱手術を受けられた方(再発例)にも比較的安全に行うことができます。麻酔は全身麻酔、手術時間は1-3時間程度、入院期間は7-10日程度です。
手術による合併症の可能性としては、頻度はそれほど高くありませんが、メッシュという異物に対する反応としての炎症や化膿、膀胱・直腸の損傷、骨盤内血腫(内出血)などがあり、また排尿に関する合併症として排尿困難や尿漏れが生じることもあります。もちろん合併症の可能性も十分に理解したうえで手術を受けていただきますが、従来の方法に比較して手術操作が単純でありかつ再発率が低いと考えられており、この手術を受けられた方の満足度は高いとされています。
TVM手術(1)、前壁形成
図の説明:
?仙骨子宮靭帯
?仙棘靭帯
?骨盤筋膜腱弓
メッシュを青色で示します
GYNECARE PROLIFTTM Pelvic Floor Repair System,
ⓒ ETHICON,INC. 許諾を得て複製
TVM手術(2)、後壁形成
図の説明:
?仙骨子宮靭帯
?仙棘靭帯
?骨盤筋膜腱弓
メッシュを青色で示します
GYNECARE PROLIFTTM Pelvic Floor Repair System,
ⓒ ETHICON,INC. 許諾を得て複製